GANKOの日記
2003年 11月    
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11月30日(日) 旧暦:十一月七日 大安 丁未 雨のち曇り
鎌倉の叔母から電話。「午後から雨が上がりそうだから、横浜まで出ようと思うんだけど来ない」そごうの入り口で待ち合わせ、買い物に付き合う。そごうは西武と一緒になったせいかずいぶんと垢抜けした感じで、地下の食品売り場も歩くのも大変なくらい賑わっていました。そごうを出た後、中華街へ。叔母がお気に入りだと言う〈広東〉というお店で食事をして帰る。中華街にありがちな“これみよがし”感のない、ごくあたりまえにおいしい広東料理のお店でした。

11月29日(土) 旧暦:十一月六日 仏滅 丙午 雨
一日中、ひどい雨降り。先日お会いした山内静夫さんへのインタビューテープを聴き返したり、関連する著作などを読みながら過ごす。夕方、キタイと一緒に野菜中心の寄せ鍋をこしらえる。

11月28日(金) 旧暦:十一月五日 先負 乙巳 曇り、時々雨はらり
十時起床。台所に顔を出すと「昨夜は大分お飲みになられたようですね。またビールと日本酒と洋酒のちゃんぽんですか」キタイが笑いながら梅湯をこしらえてくれる。胃の腑がすうっとする。夕方、小雨の降る中を少し歩く。書店で『人形町酒亭きく家繁盛記』(志賀キヱ 真二著 草思社)という本を見つけ買う。表紙の女将さんの写真が良い。

11月27日(木) 旧暦:十一月四日 友引 甲辰 曇り
十一月十一日生まれの友人が二人います。コンサルティング会社にお勤めのIさんは、声は冷たく気持ちはあったかな女盛り?の三十一歳。最近食べられる寸前の鴨のようにみるみる太ってきたAさんは広告制作会社の社長兼コピーライターで、今年で御年五十歳になりました。今日は二人の約二週間遅れの誕生祝いを、あんこう鍋の〈いそ源〉で。わたくしの手違いで神田須田町にある本店と新橋支店を間違えて予約してしまい、慌ててタクシーで移動するというお粗末さでしたが、この季節のあんこう鍋はさすがにおいしく、舌の上で時折鼓を打ちながら楽しい一時を過すことができました。〈いそ源〉を出てから新橋駅前のバーに流れ、酩酊。愚痴の少ない良いお酒でした。

11月26日(水) 旧暦:十一月三日 先勝 癸卯 晴れ
久しぶりに、きりりと冴えた秋空の広がる一日。イッテツと人形町を歩く。甘酒横丁の交差点を+の中心にして、甘酒横丁と人形町通りの両側に並ぶお店をゆっくり眺めながら、時折路地へ紛れ込む。銀座にせよ、神楽坂にせよ、路地のある街にはいのちが息づいている。従って、路地のない街は人工的な生命しか持たないような気がします。日が落ちて、路地の店店に灯りが入るとそのことが一層わかります。二時間ほど歩き、〈壽堂〉の黄金芋を買って帰る。店内にいるわずか一分ほどの間に、あたたかなほうじ茶を出してくれる心配り。

11月25日(火) 旧暦:十一月二日 赤口 壬寅 雨
一日中、ひどい雨。先日来、いろいろ調べていた郷土料理についてレポートをまとめて、某会社に提出する。帰り道、丸善と三越の地下に立ち寄る。

11月24日(月) 旧暦:十一月一日 大安 辛丑 晴れ
朝、昨日新潟から届いたお餅を焼いて、ほんわり焦げ目が浮かんできたところにお醤油をつけ、ぱりぱりの海苔で包んで食べる。あまりのおいしさに三個も食べてしまいました。
午後、江戸天下祭の山車・神輿行列を見に日比谷公園へ。天下祭というのは徳川ニ代将軍秀忠の時代から幕末まで行われていたもので、神田祭と山王祭の山車・神輿行列が江戸城内に入り、将軍に上覧を受けていたことからそう呼ばれたそうです。江戸時代の伝統と流行が凝縮された祭は、しかし文明開化で市中に電線が張り巡らされるようになると、山車の先が引っかかってしまい往来の邪魔に。明治二十二年を最後に行われなくなり、山車・山車人形は関東近県の青梅や川越や熊谷へ、あるいは遠く青森まで渡っていったのです。今回開府四百年を記念して復活した天下祭は、そうやって大切にされてきた山車の何体かも里帰りして、艶やかで華やかな行列となりました。
夕方から、冷え込みが増す。家に帰ると、キタイがあたたかなロールキャベツをこしらえて待っていてくれました。

11月23日(日) 旧暦:十月三十日 先負 庚子 晴れ
新潟のSさんより野菜とお餅が届く。お礼の電話をすると、今日は収穫祭で村の公民館に農家の人たちが集まり、お餅をついたり鍋をこしらえたりで一日中賑やかだったとのこと。雪のことを尋ねると、「昨日、山のうえんほにちっと降ったけが、今日の天気でへー消えたーねかね。きょんなは十一月の三日に除雪車が出ていたすけ、遅いほだこっつぉい(昨日、山の上の方に少し降りましたが、今日のお天気で消えました。去年は十一月三日に除雪車が出ていましたから、今年は遅い方ですね)」。そうそう、新潟といえば、新潟をホームとするプロサッカーチーム、アルビレックスが今日Jリーグの一部に昇格!胸に〈亀田製菓〉と入ったユニフォームを以前より好ましく感じていたのでなにやら嬉しいです。

11月22日(土) 旧暦:十月廿九日 友引 己亥 晴れ
今日から三連休。東京では、江戸開府四百年を記念した江戸天下祭。会場となった日比谷公園は大賑わいの様子。叔母の住む鎌倉でも、鶴岡八幡宮の新しく生まれ変わった御社殿に神さまがお遷りになられる本殿遷座祭というお祭りが七十年ぶりに行われ、ものすごい人手だそうです。冬型の気圧配置になり、全国各地から初雪便り。

11月21日(金) 旧暦:十月廿八日 先勝 戊戌 晴れ
昨夜の激しい冷雨から一転、時折暖かさも感じられるようなおかしな一日でした。お昼前イッテツと中央通りを散歩していたら、三越の前に大層な人だかり。島根館という島根県の観光PRセンターの開館日でした。最近、郷土料理のことをいろいろ調べていただけにちょいと興味を持って館内に入りましたが、来場者でごった返していてゆっくりと見ることができません。パンフレットなどをいただき、館前で販売していた五百円のお弁当をキタイの分と合せて二つ買って帰りました。お弁当の中身は肉じゃがの“じゃが”がサツマイモに代わった一品と、名産の板わかめの煮付け(美味!)、お漬物、そして宍道湖の蜆入りのお味噌汁。コンビニのお弁当などは絶対に食べないキタイですが「機械の味がしないところが、なかなかいいですね。これは売れるんじゃあないでしょうか」。あとで山本海苔のタイちゃんに電話をしたら、職場の女性社員が買いに行ったときはもう品切れだったとのこと。室町の新名所として人気が出るかもしれませんね。
パリのエミちゃんより「阿木燿子さんのインタビュー面白く読みました」とメールあり。パリではいま近郊のランブイエの森に野生のカンガルーが生息していたというニュースで持ちきりのようです。

 11月20日(木) 旧暦:十月廿七日 赤口 丁酉 雨
雨の中、行ってきました。浅草鷲(おおとり)神社の酉の市。今日は十一月で二度目の酉の日、二の酉ですが言問通りを越えた辺りから早くも露天が並び、人も賑やかでした。正面の鳥居をくぐって境内に足を踏み入れると、そこは大小色とりどりの熊手で上から下までぎっしり。万華鏡の中にいるようでした。縁起物の熊手は遠目からは皆似て見えますが、近くでみると飾りやデザインや色使いが違っていてずいぶんと個性があるものですね。大きなものはだいたい会社のお買い上げ(タイちゃんが働いている山本海苔店も、毎年二の酉に来るのだそうです)、中には石原うんたら先生とでかでかと書かれた政治家一家の熊手もあったりして(こんなところでもしっかり選挙運動してるんですね)。熊手には値段が付いていなくて、お店の人との交渉で値切った分をご祝儀として差し上げるのだとか。そこかしこから、交渉成立を知らせる威勢の良い掛け声としゃんしゃん拍子。お初のわたくしは、ちょいと照れくさくて神社の売店で売っている小さな熊手(かっこめ)を買って帰りました。

 春を待つ ことの始めや 酉の市   其角

東京に年の暮れを告げる酉の市。変わらぬ人の営み。

11月19日(水)旧暦:十月廿六日 大安 丙申 曇り、夜雨
今日も郷土料理のことを調べて過す。夕方、所用で渋谷へ。こめかみに青筋を立てておしゃべりをしているみたいなこの街が、どうも好きになれない。

11月18日(火)旧暦:十月廿五日 仏滅 乙未 晴れ
ここ一週間ほど、頼まれごとで日本の郷土料理のことをいろいろ調べています。知れば知るほど、“日本の味”などというものはなく、それは多彩で豊かな郷土の味の集積なのだということがわかってきます。参考資料のために購入した『日本の名産ものがたり』(アスコム)に、カメラマンの尾田学さんの名前を発見。今度お会いしたら、お話を聞いてみましょう。

11月17日(月)旧暦:十月廿四日 先負 甲午 晴れ
東京に、木枯らし吹く。散歩にも首筋を暖めるものが入用になってきました。夜、おでん。おでんといえば、〈神茂〉のはんぺん。汁をたっぷりと含んだふわふわの白片を、ぱくりとすれば、たちまちのうちに口の中に広がる旨さ。

11月16日(日) 旧暦:十月廿三日 友引 癸巳 晴れ
昨夜の豪雨から一転。汗ばむようなお天気。マーノ・ア・マーノ(スペイン語で“手と手”という意味)というNPOを主宰されている山本美智子さんとお会いする。美智子さんはボカ・ジュニアズというアルゼンチンのサッカークラブ日本支部の副会長をされているのですが、チームが今年の世界クラブ選手権に南米を代表して来日するということで、歓迎パーティの準備でお忙しそうでした。オノ・ヨーコさんにちょっと似たところがある美智子さんは、小柄ですがとてもエネルギッシュ。お話が大変面白く、ご主人との夫婦喧嘩のお話などは笑い転げてしまいました。美智子さんのお父様は沖縄出身で、ご本人は日系二世。今度、ぜひ対談のゲストとして登場していただきたいと考えています。

11月15日(土)旧暦:十月廿二日 先勝 壬辰 曇りのち雨
ぱっとしないお天気の中、庭師の今井老人のお宅で新築祝い。音楽家の息子さんのために母屋の隣に建てたとのこと。夕方より、寒くなる。キタイと夕ご飯をこしらえる。焼いた鱈の切り身とお豆腐に芹をたっぷりとちらしたちり鍋と、牛肉とえのき茸の佃煮。夜半より風混じりの激しい雨。

11月14日(金)旧暦:十月廿一日 赤口 辛卯 曇り
柳宗悦さんの『手仕事の日本』が大変面白く、読む。夕方、イッテツと中央通りを散歩。銀座まで歩き、コリドー街の〈ガルリカフェ〉で休む。ここはパリにあるカフェのようで落ち着きます。コーヒーとケーキのお味も宜しく、それこそ手仕事の味。

11月13日(木)旧暦:十月廿日 大安 庚寅 曇り
「そろそろ新海苔の季節だけど、がんこちゃんはどうする?」山本海苔で働くタイちゃんより、電話あり。「一回目の申込みは12月1日だよ」 完全予約の限定品ということなので、早速〈初摘み焼き海苔〉の大缶を注文する。陽が落ちるのがめっきり早くなったと思ったら、もう新海苔の季節。新米を炊いたあつあつのご飯に新海苔をのせて、あの独特のなんともいえない香りがふわふわと立ち上がってきたところを、ぱくりと。日本に生まれたことの幸せを噛み締める。ああ、たまりません。
『手仕事の日本』(柳宗悦著 岩波文庫)を読み始める。民藝運動の創始者である柳宗悦さんが、日本各地に残る手仕事を紹介しながら、日本が素晴らしい手仕事の国であることを呼びかけている本です。「・・・そもそも手が機械と異なる点は、それがいつも直接に心と繋がれていることであります。機械には心がありません。これが手仕事に不思議な働きを起こさせる所以だと思います。手はただ動くのではなく、いつも奥に心が控えていて、これがものを創らせたり、働きに悦びを与えたり、また道徳を守らせたりするのであります。
そうしてこれこそは品物に美しい性質を与える原因であると思われます。・・・」半世紀以上前に書かれた氏の慧眼に深く共感する。

11月12日(水) 旧暦:十月十九日 仏滅 己丑 晴れ
久し振りに気持ちの良いお天気。午前中よりイッテツと散歩に出かける。隅田川を渡って、イッテツの好きな向島へ。この界隈は歩くたびにいろいろと発見があるのですが、今日は五丁目の角に〈めうがや〉という小さな足袋屋を見つけました。花柳界華やかし頃の名残なのでしょう。お店の中ではいまもご主人がミシンを踏んで、お針子さんたちが足袋をこしらえていました。
夕方。スタッフによる定例会に参加するため日本橋に戻り、室町四丁目の〈砂場〉で遅い昼食をとる。天ざる・天もりの発祥のお店としてつとに名高いこちら、ビルの一階にありながらも昔ながらの佇まいを残しています。お店に入ったのは三時半ごろでしたが、テーブス席には年配のお客様が何組か座り、菊正を飲りながら蕎麦屋の昼下がりを楽しんでいらっしゃいました。お蕎麦は細身でとても上品な味わい。楊枝まで極細身の黒文字でした。もしかすると蕎麦に合せて特注しているのかもしれません。
定例会では、アフィリなんとかという仕掛けを始めたら会員数が増えてきたことなどの報告と、今後の体験企画の予定などを打ち合わせる。

11月11日(月) 旧暦:十月十八日 先負 戊子 雨
朝から冷たい雨。一日中、家で過ごす。このホームページには、訪問者がどんなキーワードでアクセスしてくださったのかを調べることのできる機能があるのですが、意外に多いのが〈さるや〉の楊枝!週に何度かは上位に顔を出しています。日本橋小網町で三百年の歴史を数える〈さるや〉についてはこの日記でも度々取り上げていますが、ふらりと料理屋に入って『あ、いいお店だな』と思って、ひょいとテーブルの端っこを見ると黒文字を使ったあの独特の楊枝がさりげなく置いてあったりすることがよくあります。それだけでお店の格がちょいとばかし上がるように感じるから不思議なものです。来年は、ぜひ“さるやの楊枝を巡る冒険”に出たいと思っています。

11月10日(月) 旧暦:十月十七日 友引 丁亥 雨
寒い一日。洋服ダンスからビニールを被っていたトレンチコートを出す。夕方、雨が小降りになったところを狙ってイッテツと散歩。中央通りを少し歩く。高島屋の地下の和菓子売り場で、〈塩瀬〉のお饅頭を買う。夜、キタイが鳥しんじょのお鍋をこしらえる。おいしいこと、この上なし。

11月9日(日) 旧暦:十月十六日 先勝 丙戌 曇りのち雨
朝、さいと町公民館へ衆議院選挙に行く。人影はまばら。あらあらと思っていたら、投票率は六十%を切ったとか。民主党は「強い国をつくる」とかなんとか無粋なことは言わないで、「みなさん、どうか選挙に行ってください」というキャンペーンを張ればよかったのにねぇ。
夕方から、冷たい雨。福井の知り合いから若狭鰈が届き、から揚げにして食べる。小ぶりな身に、海の甘さがする。夜、パリのエミちゃんからフランスの貴族についてのメールあり。「フランスはまだ貴族たちが元気で、貴族だけの会を作って毎週持ちまわりで今週末は誰々さんのシャトーで舞踏会なんてやってるんです。女の子は16歳でその舞踏会にいわゆるデビューするわけね。文字通り社交界デビュー。で、貴族の子供たちは毎週末に貴族同士で遊んでいるから自然に貴族間で結婚するわけです。うまくできてるよね」ほんとにねぇ。

11月8日(土) 旧暦:十月十五日 赤口 乙酉 晴れのち曇り
冬の立つ、と書いて立冬。十一月の酉の日でもある今日、都内各地で酉の市がひらかれていました。わたくしも浅草の鷲神社で縁起物の熊手を買いに行こうと楽しみにしていたのですが、急用ができて行けずじまい。二十日の二の酉にはぜひ行きたいと思っています。

11月7日(金) 旧暦:十月十四日 大安 甲申 曇り、時々晴れ間
山内静夫さんにお会いしたという日記を見て、パリのエミちゃんからメールが届く。今年の十二月十二日(小津監督の誕生日、そして命日でもあります)、ギメ美術館で開催される小津安二郎生誕100年祭・特別映画鑑賞会があり、そこに招待されたのだそうです。しかも、そのきっかけというのが「先週、小津監督に関するフランスでの事業を仕切っていた監督のいとこさんの小津さん(故人)の奥様に他の件でご紹介いただき話しているうちにどういうわけかご招待いただいた」というのですからなんとも不思議な縁ではありませんか。「しかも30人限定ですって。なんと言う幸運!!でも仕事が入っていて泣く泣くお断りしました」 すごい!うわー、よかった!ええーっ、残念!そんなのあり? なんといってよいかわからないメールでしたが、小津さんとはこれからもお付き合いできそうということなのでほっとしました。
彼女も原節子さんの大ファンで、『秋日和』を観たということに「原節子の美しさ!!同感です!!現代日本人女性であの美しさを持つ人にあったことがありませんね」と、びっくりマークが四つもついていました。フランスでは北野監督の座頭市が昨日から公開され マトリックス完結編とともに大人気。小津、黒澤は相変わらず根強いファンがいて、最近ではスタジオジブリ作品も人気を集めているそうです。
本日、ホームページをリニューアル。ウェッブの担当をしてくだすっているオッズファクトリーの正木さん、岩本さん、栗原さん、連日ご苦労様でした。これを機にますます充実していく(予定)です。今後ともどうぞ宜しく。

11月6日(木) 旧暦:十月十三日 仏滅 癸未 朝のうち雨、のち曇り
お昼過ぎに叔母の家を出て、大船へ。鎌倉ケーブルコミュニケーションズの会長室で、山内静夫さんと対談。ちょうど昼食後ということもあり山内さんは少し眠そうなご様子でしたが、小津安二郎監督の思い出を語っていただくうちにだんだんと目が輝いていくのがわかりました。小津監督が生前に好んだお店やお料理、一筋であることに対するこだわり、小津ファンなら誰もが知っているカレー入りすき焼き、食の話題から始まって話しは自然と小津映画、そして小津安二郎という人間の生き方へ。一時間ほどの対談のはずが、だいぶんオーバーしてしまいました。「小津先生は、やっぱり映画作家だったんだなぁ」最後に山内さんが呟くようにおっしゃられた一言が印象的でした。小津監督と直に接した方々が少なくなっている中、最後のプロデューサーとして私生活の面でも親しかった山内さんのお話をお伺いでき、とても幸せな時間を過ごすことができました。対談は、十二月に掲載する予定です。乞う!ご期待
夜、久し振りに日本橋に戻る。そっけない態度のイッテツでしたが、尻尾は正直なもので、激しく揺れていたのでありました。キタイのこしらえてくれたお味噌汁がおいしい。

11月5日(水) 旧暦:十月十二日 先負 壬午 曇り、のち雨
最近の天候不順のせいかどうか、叔母がちょっと風邪気味で、朝からこほんこほんと咳き込んでいます。空模様がさえないこともあり、どこへも出かけずに叔母の家で過ごす。昼食に稲庭のきつねうどん。夕食には茶碗蒸し、大葉をはさんだ鳥のささみ揚げ、春菊のおひたしをこしらえる。夜、『秋刀魚の味』を観る。明日は、大船で山内静夫さんとお会いします。

11月4日(火) 旧暦:十月十一日 友引 辛巳 晴れ
気持ちの良い秋の一日。午前中は、浄明寺界隈をゆったり散歩。午後からは、いずみ先生の料理の文章をまとめ、電話でやりとりなどして過ごす。今月の料理は、白菜の丸ごと使いっきり。先生は張り切って四品もこしらえてくださいました。「この〈白菜なべ〉、ほんとうにおいしいのよねぇ」という話を叔母にしたら、早速叔母は買出しに出かけ、鎌倉駅の市場で路地もののパンッとした新鮮な白菜を抱えて帰ってきました。先生からいただいたレシピをもとにこしらえたところ、叔母にも大好評。二人でふうふう言いながら平らげてしまいました。夜、叔母と小津監督の『秋日和』(原節子と司葉子があまりにも美しい!)を観ていると、キタイから電話。イッテツがちょいとすねているとのこと。

11月3日(月) 旧暦:十月十日 先勝 庚辰 小雨
小雨の降る中、叔母と北鎌倉の円覚寺へ。特別公開の国宝舎利殿を見たあと、風入をしている方丈へ。円覚寺の宝物(ほうもつ)を集めて虫干しをする風入は、年に一度十一月の三日前後の数日間だけ行われるもの。方丈に入ったところで、ばったりと佛日庵の高畠瑞峰さんに会う。よく通るあのお声で拝観者に展示品の解説をされているところでした。先日の対談のお礼を言い、拝観を始める。多くの重要文化財を含む宝物の中で、小書院に展示されていた牧渓の『岸樹遊猿図』の前にしばし佇む。
お昼は北鎌倉駅前の中華料理店〈大陸〉。「このお店はお相撲のカレンダーなんかがあって全然お洒落じゃないから、観光客はみな素通りしてしまうんだけど、味に飾り気のないところが好きなのよね」鎌倉でラーメンのおいしいお店は意外とないのですが、叔母のお気に入りは〈大陸〉のほかに若宮大路の材木店をちょいと入ったところにある〈鎌倉赤坂飯店〉だそうです。
午後、雨足がひどくなってきたので浄明寺に帰る。少し早めの夕食をすまし、『お早よう』を観る。

11月2日(日) 旧暦:十月九日 赤口 己卯 晴れ
鳥の声で目が覚める。窓を開けると秋らしい良いお天気。叔母と相談し、天園のハイキングコースを少し歩く。とても気持ちが良い。お昼過ぎに山を降りて、筋替橋の近くの〈風(ふう)〉というお蕎麦屋さんに行く。「若宮大路の〈小寿々〉で修業したご主人と奥さん、二十六歳の若夫婦が切り盛りしているお店だけどなかなかのものよ」という叔母の言葉通りのおいしいお蕎麦でした。お店を出たあと、夕食の買い物をしていくという叔母と別れて小町通りにある大好きな古書店〈木犀堂〉に立ち寄る。ご店主は今日も不機嫌そうで、それがまたよろしい。三連休の鎌倉は、それにしてもすごい人手。
夕食は、叔母の手料理。わたくしも鯵を叩く。秋野菜をたっぷり使った煮物がおいしい。夜、『彼岸花』を観る。原作の里見_氏は、山内静夫さんのお父様である。

11月1日(土) 旧暦:十月八日 大安 戊寅 曇り
昨夜は久し振りに遅くまで叔母と話し込み、目が覚めたら九時過ぎ。一階に降りると割烹着を着た叔母が台所に立って朝食をこしらえているところでした。さいと町にいるときの朝はご飯に海苔という和食のわたくしですが、叔母はどちらかといえば洋食が好みで、朝比奈街道の岐れ道のそばに並んで店を構えている〈ベルグフェルド〉のクロワッサンと〈アルトシュタット〉のベーコンと卵に紅茶という場合が多いようです。
日中は叔母の家の近くを散策して過ごす。落ち葉がだいぶ降り積もってきています。夕方、叔母と連れ立って裏駅の〈鳥秀〉へ。寡黙なご主人が焼く鳥のおいしさと女将さんの柔らかで上品な接客に大満足でした。夜は木曜日の山内静夫さんの対談に備えて、山内さんが製作を担当された小津作品『早春』を観る。