| Ganko: |
東さんは、『良い食材を伝える会』というNPO法人の理事をされているんですよね。 |
| 東 : |
理事といってもそんなに偉そうなもんじゃなくて、ぼくの場合は名前だけ置いてあるようなものなんだけれどね。 |
| Ganko: |
どんなきっかけで引き受けることになったのですか? |
| 東 : |
この会は料理研究家の辰巳芳子さんと、NHKで農政関係の解説委員をやっていらした中村靖彦さん(現・明治大学客員教授)というお二人が中心となってできたものです。辰巳さんとは以前に『きょうの料理』という料理雑誌の取材でお会いしてから親しくさせていただいていて、発足時に「一緒にやりましょうよ」と声を掛けてくださった。 |
| Ganko: |
辰巳芳子さんとお母様の浜子さんとのことは、東さんの自伝的エッセイでもある『湘南』にも書かれていますよね。「お二人を知るまでのぼくは、ただのがっつきにしかすぎなかった」というのは本当ですか? |
| 東 : |
ほんと、ほんと(笑)。辰巳浜子さんの書かれた料理のエッセイからは多くのことを学びましたし、芳子さんの料理を通じた人間の精神や生き方についての考え方にも共感できることがたくさんあります。 |
| Ganko: |
ホームページを拝見すると、いろんな活動をされていることがわかりますが、東さんとしてはこの会の根っこはどんなところにあると考えているのでしょう。 |
| 東 : |
食には、2つの側面があります。ひとつは食べる側から見た食、もうひとつはつくる側から見た食です。この2つのバランスがとれていないといけないわけだけれど、日本の場合は非常にアンバランスなことになっている。 |
| Ganko: |
アンバランスというのは。 |
| 東 : |
食べる方というのはとてもイージーに情報を得ることができるでしょう。メディアにも取り上げられるし、情報源もたくさんある。ガイドブックを見ながら、あそこの蕎麦はおいしいとか、鮨がおいしいとか、食べることについて自分を高めていくことが可能です。しかし、つくる側のこと。彼らがどれだけ努力しているか、どんな苦労や苦悩があるのか、発信する場は限られているし、ぼくたちが知ることができる機会もとても少ない。 |
| Ganko: |
たしかに、そうですね。 |
| 東 : |
しばらく前から、有機野菜や無農薬・低農薬野菜が注目されていますよね。それらは付加価値として高く売れるので、農家としてもつくりたい。でも、実際につくるとなるとものすごく大変なんです。隣の畑で農薬を使っていると風が吹いて飛んでくるからダメとか、自分の土地だけでなく周りの環境に左右される。法律でも厳しく規定されていて、誰もがつくれるわけではない。それでも苦労してつくっているところに、中国から安い野菜がどんどん入ってくる。一生懸命やってもなかなか儲からない。サラリーマンの人たちの給料の何分の一かで一家4人が暮らしていたりする農家はたくさんいますよ。それでも日本の野菜は高いといわれる。そういう問題を一体どうしたらいいんだろう。決して傲慢ではなく、食べる側がつくる側を育てていかなければならないんじゃないか。そしていろんなことにめげずに良い食材をつくっている人たちにスポットを当てて、少しでも元気づけて自信を持ってもらえるようにしていこうというのが大きな目的だと思っています。 |
| Ganko: |
実際に、畑を借りて野菜をつくっていらっしゃるそうですね。 |
| 東 : |
千葉県に10アールの畑を借りて、去年(2002年)から有機野菜をつくっています。先日のGWにも行って、秋に植えた赤蕪を収穫して、里芋とヤツガシラ、ごま、ピーナッツ(落花生)を植えてきました。ぼくは今までこういう経験がないから、とにかくびっくりすることばかり。落花生には茹でピー用と炒りピー用があるとか。植える時には尖がっている方を下にしなきゃいけないとか。ごまを蒔く機械があるとかね。 |
| Ganko: |
ごまを蒔く機械があるんですか?あんなに小さいのに。 |
| 東 : |
野球の白線を引くやつみたいなの。その名前がゴンベイっていうんだ(笑) |
| Ganko: |
ご自分でつくってみて何か変わりましたか?やっぱり大変? |
| 東 : |
もう大変も大変(笑)。去年の秋に、ほうれん草を収穫したんだけど、ほうれん草の葉っぱというのはぎざぎざしているものとばっかり思っていたんだよね。でも、最初に出て来る葉っぱというのは丸くて、食べちゃいけないんだって。それを2、3枚取って束にしていくんだけど、ちょっとやそっとじゃ束にならないんだ。ぼくたちはスーパーや八百屋さんで、一束98円とかで当たり前のように買うけれど、98円分のほうれん草をつくるのってほんとに大変なんだって。こんなに骨折って、こんなに大変なのに、こんなに安いのか! そのことがわかっただけでも良かったと思っています。 |