| Ganko: |
山菜というのは自然のいただきもの、野菜は人がつくります。どうちがうんですか。 |
| 中 東: |
野菜も元々は山菜であったはずなんですね。それが長い年月をかけて世界中に散らばって、手を変え、品を変え、何千年も繰り返されていまのものになっていると思うんです。農家のみなさんの工夫と土の芸術でしょうね。ところが、ここ何十年間の間に均一化されてしまった。いちばん衝撃的だったのは長野県の清里。 |
| Ganko: |
行かれたんですか。 |
| 中 東: |
あの辺りは高原野菜の産地で、ダーっと畑が広がっていますよね。私が行ったときはちょうどレタスを収穫してはって、近づいて見たら機械でカッカッカッ刈り取って、出てきたらラップに包まれて箱にパンパンパンと、後ろにトラックがいて積んでいるわけですね。それ見て、レタスさん、気の毒やなぁと。そりゃ、たしかに人間にしてみたら、採ってすぐに市場に出して消費者に渡っていくっていうのは、非常に新鮮で都合がええかもしれないけど、レタスにしてみたら一晩くらいちょっと休みたいんやないかと。私がレタスやったら、そうして欲しいなと思うんですけれどね。 |
| Ganko: |
(笑)そうですよねぇ。 |
| 中 東: |
それもみなかたちが一緒でしょ。あれはどうみても食べもんじゃないですよ。工場生産ですよね。専業農家がつくってはるお野菜と、私たちが買っている家庭菜園でおじいちゃんおばあちゃんが手塩にかけて孫や息子のためにつくってはるお野菜とでは、見た目でもう明らかにちがうわけですよ。 |
| Ganko: |
そんなに違いますか。 |
| 中 東: |
かたや、植木屋さんが刈り取ったんかと思うくらい同じ間隔で同じ太さで生えてる大根。かたや、長いのもあれば短いの、いろいろ虫は食うてますしね。そいで、味比べてみたら、まるで別もののようや。だから、品評会ってよくあるでしょ。はっきり言うて、あんな品評会でおいしいものないですよ。こんな大きい大根より、きゅーっと小さくて身が締まっている大根の方がよほどおいしいですから。ああいう品評会を農政下ですること自体がナンセンスやと思いますよね。 |
| Ganko: |
結果として、均一的なものになっていく。ならざるをえないんでしょうね。 |
| 中 東: |
流通の中で整理する言うても、あんたら整理してばっかりで、味見てんのかって。きちっときれいに同じ長さで並べてですね、整理していくわけでしょ。曲がってんのは、みな落とされて安い値で叩かれるじゃないですか。秋の盛りのころ、キャベツ一箱500円ですよ。10個くらい入っていて、1個50円。その中に運賃から箱代まではいっていて、それもきちっと同じ大きさに揃える手間かけて。お百姓さんをばかにしてますよ、それは。 |
| Ganko: |
ほんとですよね。 |
| 中 東: |
消費者はそんなこと考えんと、「こりゃ、安いわ、買おか」いうて黒山の人だかりになる。 |
| Ganko: |
消費者も消費者。 |
| 中 東: |
〈美山のやおや〉でもそうですが、消費者もできるだけ無農薬、減農薬で、自然のものがいいっていわはる。でも土がついているとやっぱりだめだ。虫がついていると「わー、これ、ナメクジいませんか」て。あんた、なにしにここへ来てんの。それやったらスーパーできれいなの買えよって。 |
| Ganko: |
農薬を使わないことと、ナメクジが結びつかないんですね。 |
| 中 東: |
そこまで鈍くなってます。ちょっと脱線するかもわかりませんが、息子がイタリアに料理の勉強に行ってるもんで、それにかこつけて年に何回か行ったりするんですが、やっぱりね、日本て異常ですよね。フランスなんかでも、市場に行ったら、おばあちゃんが「私のつくった人参よ」いうて山のようにして売ってるわけですね。みんな土も葉っぱもついてるお野菜ですよ。ヨーロッパの人は、お野菜にしても絶対ナイロンにはつめないですからね。きれいにずらーっと前に並べてね。おしゃれですわ、また。 |
| Ganko: |
そうそう。ほんとにきれいですよね。 |
| 中 東: |
ラディッシュ置いたりしながら、もう自分の作品として並べてますから。スーパー行ったって、ジャガイモやったら、小さいのから大きいのまでみな一緒にしてるわけですね。それを自分たちで袋に入れてレジに持っていって計り売るというスタイルです。日本なんかスーパーでジャガイモの袋がどれとってもみな5個なら5個入ってますもんねぇ。 |
| Ganko: |
そうじゃないと売れないみたいですね。 |
| 中 東: |
だめなんですよね。結局、規格外のものはみなはじかれて、捨ててしまう。せっかくみな大地の養分を吸ってるのに。曲がってる言うても、種から伸びていくときに小さな石ころひとつあっただけで、二股に分かれたりしますから。胡瓜にしても曲がってあたりまえなんですよね。 |
| Ganko: |
まっすぐな方がおかしい。 |
| 中 東: |
そのために選定して、曲がったのが出たらポイしてたら、お百姓さんとしては生活が成り立へんやないですか。あれを全部買って流通に乗せてやれば、お百姓さんの手間もかからない。それにお野菜というのは土を落としてしまったら、そこで命が終わってしまうんです。 |
| Ganko: |
そうなんですか。 |
| 中 東: |
どんどん鮮度がわるなっていく。蓮根でもそうですが、きれいに洗ってあるでしょ。水にかけたらそこでもう細胞が死んでしまいます。だから、うちは加賀の畑から土なりのものを送ってもらったりしてますけどね。何かがおかしいんですよ。とにかくいちばんばかな目にあっているのは、頑張ってつくったお百姓さん。そんなんじゃ、勤労意欲なくしますよ。 |
| Ganko: |
誰がこれから農業をしたいと思うかですよね。 |
| 中 東: |
そうそう、そうです。やっぱり手塩にかけたお野菜は少しでもいい値で買ってあげないと。それだけの手がかかっているわけですから。 |