| ご挨拶 『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人梅安』など江戸を舞台にした数々の名作の作者である池波正太郎氏は、食に関するたくさんのエッセイも書き遺されています。 その中の一冊『食卓の情景』のあとがきに、次のような一節があります。 いま、日本人の食生活は、私どものような年齢に達した者から見ると、激変しつつある。 近い将来に、われわれと食物の関係は、おもいもかけなかった状態へ突入するかも知れない。 この作品が刊行されたのは昭和48年(1973年)のことですが、現在のわたくしたちの食を取り巻く環境は、 氏が予見した「おもいもかけなかった状態」を通り越し、その状態がもはや日常化しています。 美味しいという日本語には、美という文字が含まれていますが、今や“美”抜きのただの味しかしない食が世の中に溢れています。 口にするものが安全であることはあたりまえのはずなのに、それがセールスポイントになってしまうおかしさ。 グルメ情報が氾濫し、評判の和食屋に若い女性たちが殺到するのは結構なことですが、家庭から和食が消えている裏返しなのかもしれません。 食について書き連ねていくと、ほんとうに「ふにおちぬ」ことばかりなのですが、わたくしが『美しい味くらぶ』を立ち上げたいと思ったのは、 こうした日本の食の現状を寄って集って非難するような野暮な真似をしたいがためではありません。 日本という美しい国に生まれたわたくしたちには、美しい味を感じるちからがあるように思えます。 でも、美しい味とは何かと聞かれても、わたくしには答えることができません。 もし「美しい味くらぶ」に目的と呼べるものがあるのなら、会員の皆さまとご一緒に、その何かを見つけることかもしれません。 まだまだ未熟で力不足なわたくしですが、どうぞ末永く見守りください。 Ganko |