この季節になると、日本全国津々浦々の家庭で、やおら鍋が取り出され、鍋奉行たちが腕を振るう。しかし、どこの家庭でも味わえるものこそ、じつは奥が深い。本物の鍋料理を味わい、かつ真髄に触れることができるような機会を設けたいというのは、かねてからの願いであった。
東京には、鍋料理を売り物にしている名店・老舗が数多くある。さて、どのお店にしたらよいものか。河豚(ふぐ)はどうだろう。とも考えたが、ふぐは元来上方のものである。ならば、と思いついたのが、鮟鱇(あんこう)であった。あんこう鍋といえば、〈いせ源〉であろう。
東京で唯一のあんこう料理専門店である〈いせ源〉の創業は、天保元年(1830)。当初はどじょう料理店だったというが、四代目の立川政蔵氏が、大正末期から昭和にかけて鍋料理を始め、上方では下魚といわれたあんこうを見事な料理に仕上げた。以来、冬の寒い日ともなれば、食道楽の著名人から市井人まで、店先はその変わらぬ味を求める人で引きも切らない。
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| 江戸の面影を残す本館は、昭和5年に新築。無事に戦火を生き残り、平成13年に東京都の歴史的建造物に指定されました。暖簾をくぐると、風格ある玄関で下足番のおじさんが迎えてくれて、昔懐かしい世界へと誘ってくれます。 |
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