〜くだらない話〜

明和八年(1771年)に書かれた川柳集『柳多留』に、こんな句がある。〈山十に土佐を遣うとかつぎいひ〉 山十とは上方の高級醤油、土佐は鰹節、かつぎは今でいう屋台の蕎麦屋。すなわちたかが蕎麦屋が上等なものを使っていますと自慢している様をからかっているわけである。こうした句でもわかるように、江戸時代の初期には江戸と関東近隣の食品加工技術は上方に比べてかなり遅れていた。そのため上方から廻船で運ばれてくる「下りもの」が高級品とされていたのである。「下りもの」の逆、「下らないもの」とはもちろん江戸周辺で産物のことで、これが「くだらない」の語源となっている。何事にも本物が少なくなっている昨今、くだらないものは江戸周辺だけでなく日本全国に蔓延している、と言ったらちょいと言い過ぎだろうか。